各プロジェクト

上海アマラホテル・中国

敷地面積:7,615.00m2 / 建築面積:3,972.50m2 / 延床面積:39,716.20m2
用途:ホテル
ロケーション:中国人民共和国

2004年シンガポールにあるホテルグループ、アマラ(Amara Holdings)のCEOであるアルバート・テオ(Mr. Albert Teo)氏から特命で受ける商都上海で進められているホテルプロジェクトである。400室以上の客室を持つメインタワーとともに、オフィス棟を持ち、ポディアムには商業と大スパンの架構を持つホテルの宴会場などのファシリティが複雑に展開している。

現在杭工事が進行中であるが、市政府からの行政指導によりファサードの一部見直しを実施中である。

一瞬にして、香港、シンガポール、東京と肩を並べるアジアの大都市の一角として変貌を遂げた上海。これまでの急成長と都市化に対する反動もあり、市政府の建築行政はここにきて、きわめて厳しい指導を始めている。日本ではすでに珍しくない熱線反射ガラスによる光公害の問題、日本と同様の日影規制など、こうしたことに対する市民感情を配慮する指導の一方で、ある特定のものや事柄を連想させる意匠に対しても、極めて敏感である。

方案設計(最初期の概要案提出)ですでに了解を得ている15パーセント以下の熱線反射ガラスの使用が取り消されるだけでなく、頂部の円形が日の丸を想起する、などの指導を受けた結果、行政サイドからの変更要求は左の立面図ような不条理なものである。

この要求に従って、以下のスタディーを続けるものの、ガラスの使用が至極当然である部分にアルミの単板を使用する不自然さと違和感はどうしても拭えない。

カーテンウオールを採用する場合、海外ではカーテンウオールコンサルタントを別途アポイントするのが通常である。よく知られているところでは、イギリスが拠点のアラップ・ファサード、またアジアでは構造設計事務所として知られているマインハートが運営するマインハート・ファサードテクノロジーなど、こうした事務所には日本のサッシメーカーを経てその業務に従事する技術者もいる。また、アラップ・ファサードから独立したジョン・ペリー氏がオーストラリアを拠点にサービスを展開しているコーゲル・ウエグナーも信頼できるコンサルタントの一つである。カーテンウオールはその比較的高いコストだけでなくこうしたコンサルタントへの出費も考慮せねばならない。日本のようにサッシメーカーの責任施工とはいかない中国のようなマーケットの場合、特に気をつけておきたいことの一つである。また最近の傾向ではPC サム(Provisional Cost Sum)など分離発注によって本工事からカーテンウオールの工事を外すケースも多い。これはコスト管理や施工の責任の所在を明らかにする目的もあるが、施主側のプロジェクトマネージャーの経験と能力が問われる。以上のようにカーテンウオールはシンプルなデザインとは裏腹に施主にとっては多少厄介なデザインソルーションなのである。

こうしたことを踏まえ、最終的にたどり着いたエレヴェーションは行政サイドの指導も十分考慮し、ガラスの使用量を極力コントロールした。結果、壁はアルミの単板の仕上げ、窓には素直に熱線反射ガラスを使用するといった自然な流れの中に上海には未だ見ないユニークなものとなっている。