各プロジェクト

フェテ・ホテル フィリピン

敷地面積:1,452.40m2 / 建築面積:879.62m2 / 延床面積:16,185.01m2
用途:ホテル
ロケーション:フィリピン共和国

フィリピンの首都マニラの新都心フォート・ボニファシオの中心に立地し、タワー低層部は宴会場等のコンヴェンション・ファシリティーとレストラン、タワー中層部はサービスアパートメントならびにスイミングプール、スパそしてジムなどの共用部分、タワー上層部はホテル、ペントハウスにオーナーのプライベートスペースであるオーナーラウンジと言う複雑な構成である。

アジアにあって、SOMをはじめアメリカの大手設計事務所が比較的設計の機会を得ているマニラ、やはり今なおアメリカンマネーが色濃く反映している証しであることは言うまでもない。ただそうは言ってもフィリピンのGDPは広島県と同程度であるから、決して高くはない。そんなフィリピン経済をけん引するのは、実は現地の華人である。フィリピインの民族構成の大半は先住民であるところのマレー系であるが、華人や混血のスペイン人などであり、スペイン系のアヤラグループをはじめ、その他は多くの華人が経済を取り仕切っていると言っても過言ではない。このプロジェクトのクライアントも中華系で現地で金融、不動産そしてホテル業を営む財界人である。

与えられた敷地は、マニラ最大の商業区マカティーが飽和状態であることから、今後の成長が著しく望まれる新副都心フォート・ボニファシオにある。比較的シンプルな高層の建物が建ち並ぶ中、要求された内容は、「矩形の効率のよい平面で、容積を使い切りながら高さはぎりぎりに抑える。一方で、全高が88メートルともはやマニラにあってさえ高層の建物には属さないにしても、存在感のあるものにして欲しい。」と難しいと言うより、かなり矛盾をはらむものである。

そこでマニラと言う都市のにぎわい、つまりは街に溢れるミュージック、それは時にジャズでありロックであり、ある時はクラッシックであり、そうした様々な音楽を封じ込めた五線譜を連装窓の不連続性に映し出してみてはどうかと言う発想の下、ファサードのデザインコンセプトが出来上がった。こうした複雑な表情を持つ窓のデザインは、マニラの施工精度に対してまた風土や環境にも配慮するが故のものである。日系のゼネコンであればともかく、マニラでの施工精度はあまり期待することはできない。そこであえてフラッシュと言う窓周りにはこだわらず、大型のベイウインドーにすることで外壁の施工精度を吸収する逃げ的役割を持たせた。また、日本と異なり冬のない常夏のマニラは、部屋内が結露することはない、故にインシュレーションも必要としない。むしろ室内の過度の冷房のため外側の窓面に結露が生じる。ディテールにもあるように窓下に設けてある水きり板は雨水のためのものではない。こうした結露による雨滴を着ることで外壁の汚れを防止することにある。雨は日本とは違い、スコールであるからこのような水きり板は意味をまったく持たないし、むしろ雨が窓面を一瞬に洗い流してくれる。これら諸般の現地の特性を配慮しながらも自由な室内レイアウトにも多様に対応していくという狙いのデザインは、みごとにクライアントを満足させる、マニラにはない新しい高層ホテルの顔を形作る。