各プロジェクト

フラミンゴ・バレー シンガポール

敷地面積:31,162.00m2 / 建築面積:15,581.00m2 / 延床面積:45,141.41m2
用途:集合住宅
ロケーション:シンガポール共和国

St Thomas Suite の設計を高く評価していただいたことから、2007年に特命で頂戴した低層の大型コンドミニアムプロジェクトである。シンガポールの都心部より東へ車で約10分程の、シンガポールでは珍しく起伏に富む敷地である。周囲は低層の高級住宅が建ち並ぶ閑静な住宅街であり、中心市街区からも近いこともあり、“アーバン・リゾート・コンドミニアム”というテーマでデザインを展開する。

コンテンポラリー・モダンなデザインがもたらすテイストはクールでストイックである。都市的な表情を演出するには最高であるが、一方、温もりのあるデザインを持ちながらモダンなテイストを生みだすのは意外に容易いなことではない。シンガポールの街並みを構成するショップハウス、日本で言うところの町屋の街並みである。日本の町屋の格子戸や簾などの窓を演出するこうした線のデザインは、当地においてもシャッターと呼ばれる木製の鎧戸がファサードの大きな要素の一つとなっている。それは借り物とはいえこれまでのシンガポールが形作ったものであると同時に、もはやこの国の歴史を反映する固有の風景と言っても言い過ぎではない。このシャッターを窓まりに活用することで木製の木の温もりだけでなく歴史的郷愁すら表現できる。また開閉状態で自然なファサードの表情ができるとともに、開いている時は垂直方向に展開するフィンのようなアクセントにもなる。自然な暮らしからうまれる開閉と言う使用によって、設計者の意図を越えた自由な表情と風景をファサードが生むのである。最上部のペントハウス・ユニットについては、ガラスのスキンで覆い、空と一体につながるシームレスなスカイラインによって、建物全体のヴォリュームから来る威圧感を軽減するよう図った。

前項でも述べたように、容積の緩和が得られるセラブルエリアはディヴェロッパーにとって重要な事項である。しかしペントハウスユニットはフルハイトのガラスで覆われているためバルコニーが無い。その代わりにルーフガーデンを設けることで暮らしのニーズに応えるPES(Privat Enclosure Space)を提案することでこの問題を解消している。このスペースにはユーティリティースペースだけではなくユニットによってはプライベートプールも兼ね備えている。

このような大型の開発の場合、各ユニットへの寄り付き方が問題になる。敷地内道路が外周部に設けてあり、Eデッキ(人工地盤)下のバッテリータイプのコアスペースにあるリフトロビーに車で直接寄りつけるようになったいる。来客者はオブザベーションブリッジからつながるガラスリフトでEデッキの盤面にひろがる水盤をくぐり抜け、水盤の下にあるサンクンスペースのロビーから各住棟のロビーへ寄りつけるようになっている。水盤したのサンクンロビーはウオーターフュチャ―から流れ落ちる水とその音、太陽の光、風や緑の匂いさえも運んできてくれる健康的なデザインとなっている。Eデッキの上は豊かな水と緑をたたえるガーデンスペースで、居住者だけでなく来客者もオブザベーション・ブリッジからその美しさを一望することができるようになっている。

当案件は、2008年のリーマンショックの影響で1年間設計活動が中断するも、マーケットの反応を考慮して一部設計の内容の見直しを経て、2014年末の竣工を目標に工事が進行中である。