各プロジェクト

ホイアン・ダナンリゾートホテル ヴェトナム

敷地面積:40,000m2 / 建築面積:10,000m2 / 延床面積:12,000m2
用途:リゾートホテル
ロケーション: ヴェトナム社会主義共和国

ベトナムの首都ハノイと最大の商業都市であり、また古都であるホーチミンシティーとのちょうど中間にある都市ダナンに計画されているビーチリゾートホテルである。世界遺産にも登録された、また日本ともゆかりのある古都ホイアンなど、ビーチリゾートとしてだけでなく魅力あるベトナムの地方都市と街並みがそこには広がっている。

ビーチリゾートしてのこのプロジェクトの敷地は4ヘクタール、そこに100ユニットのヴィラを設けることが設計要求である。比較的余裕のあるプログラムではあるが、100ユニットのそれぞれの利用者に余すところなく満足がいくテイストを作ることは容易ではない。ビーチに直接面する数ユニットは潮騒を楽しむことができるなどのビーチリゾートとしての魅力を満喫することができる。一方、ビーチから奥まったユニットにビーチリゾートとしての魅力を持たせることはかなり難しい。内部へ行くほどせり上がるような敷地ではともかく、全体が平たんであるがため、大多数のユニットで海を感じることができない。となるとビーチに面することのできないユニットにどう魅力を持たせるかが、デザインの大きなコンセプトとなる。また敷地のビーチ沿いには隣接する高級リゾートホテルがある。デザインはバリにあるアマン・キラーのまさしくコピーである。 オリジナリティーは全く見当たらないし、ベトナムのこの地に立つ必然性も全く感じない。地域性やその特徴そしてその文化を建物にどう反映するかもこのプロジェクトのコンセプト作りには欠かせない点である。

この敷地から車で約10分の距離にホイアンと言う街がある。ヴェトナムの古都であり文化遺産であるこの街の魅力は水路とヴェトナムの町屋の持つ古い街並みである。車の乗り入れは禁止されているため、自転車版のサイドカー(フロントカー??)であるトライシャワーに似た乗り物が交通手段であり、その面白みは観光にも魅力を添える。この街は古く日本の影響もうけており、街の中心にある橋は日本人橋と呼ばれている。こうしたテイストを活用しながら、水路のあるリゾートに変身することで、ビーチから離れたユニットにも親水性を与える。アプローチにはゲートからあえて軸をはずし、直接は見えない池を設けそこに日本人橋の建築的ボキャブラリーを生かした橋を渡す。この橋自身がチェックインカウンターを持つロビー空間を形作る。この池には小舟が停留してあり、小舟で敷地内にめぐらした水路を利用して各ビラに案内される。各ユニットは水路に面し前庭が設けてある。水もから運ばれる風がリビングに入り込む。朝食は箱モノのキャンティーンではなく、敷地の中の水路の4か所にボートが停留しており、このボート上でブッフェバイキングを楽しむことができる。タイの水上マーケットにヒント得た水上レストランである。やはりここでも“非日常性”は大切なテーマである。

しかし、こうしたリゾートには1週間以上といった長期での利用が珍しくない。非日常性も次第に日常と化して来る。次第にローカルの食事にも飽き、だがホテルのまわりを見わたしてもローカル食のレストランしかない。リゾートホテルは都市とは隔絶されたところに位置することは珍しくない。そんな時、ファインダイニングを見つけることはかなり難しい。そこで今回、このホテルのレストランにはフレンチのハイエンド向けのレストランを海辺に設けてみた。言うまでもなくヴェトナムはフランス文化の影響を近代に得ている。小舟でアプローチするのはホテルレジデントだけではなく、ローカルはもとより、うわさを聞きつけた他のホテルにステイしている紳士淑女も小舟で登場願い、潮騒に耳を傾けながら沈む夕日に普段の洗練された時間をとりもどす。“非日常性の中での日常性への渇望”を満たす。これからのハイエンドリゾートには気楽な普段着でチェックインする一方で、スーツケースの中には水着だけでなく男性はブラックスーツ、女性ならブラックドレスもひそかに仕込んでおけることが本当の意味での6スターリゾートホテルだと考える。