各プロジェクト

パラオ・リゾートホテル

敷地面積:21,480.62m2 / 建築面積:2,578.40m2 / 延床面積:8,594.65m2
用途:リゾートホテル
ロケーション:パラオ共和国

本案件は、フィリピンの東南に位置する海洋国パラオのアイランド・リゾートホテルプロジェクトである。敷地にはほとんど陸地はなく、ほぼ全体が浅瀬の海になる。

リゾートホテルの場合、その事業収益と言う点から最低の客室数は一般的に100室から150室が目安になる。ハイエンドの全室ビラタイプでも50室から60室が要求されることが多い。4スターから5スターホテルのスタンダードルームのサイズは40m2前後から55m2前後、こうしたサイズのルームを100室以上となると、建物のヴォリュームは決して小さなものではなくなる。グアムやハワイでよくみられる一昔前の白い箱モノのホテルブロック、これでは今日、多くの人々が求めているリゾートテイストとは程遠い。いかにヴォリュームをスケールダウンしヒューマンスケールに近づけるかがデザイン上の大きなテーマである。

平面上に10室の宿泊ルームを円形状に配置し、ベッドスペースとリヴィングスペースの各々に窓を配置し開放感のあるものにする。このレイアウトの弱点は外壁の周長が長くなる一方で、円形の建物の中心部がデッドスペースになってしまう。そこでこのスペースにアトリュームを設け、そこには海水を導き入れ船着き場として利用する。天井部分にはあえて屋根はかけない。開け放された天井部の開口からは、南国の日差しだけでなく、時にはスコールも降り注ぎ、雨滴が跳ねる海水面に浮かぶ小舟は波しぶきをあげながら揺れる。こんな光景が、今求められているリゾートホテルのテイストではないだろうか。アプローチのために設けれた開口部は極力狭め、明るい日差しから一瞬日差しが奪われたのち、内部空間の天井開口部からの日差しに目がくらむ。こうした光のシークエンスを楽しめるのも南国の魅力ではないだろうか。円形の建物にはボートやヨットが入りこめる開口部を設け、時にはこうした交通によってホテル内の施設を楽しむなどの“非日常的体験”、きっとこれこそがリゾートならではのよろこびなのだと考える。この平面形を二層に積み上げ、20室、三層のもので30室、この両者の組み合わせで計50室、さらにこの組み合わせを3組にすれば合計150室の客室数を確保することができる。二層のヴォリュームはもちろん三層のヴォリュームでも十分ヒューマンなスケールを維持することができる。また通常売りにくい一階のユニットが親水性と言う魅力を持ち同時にセキュリティーとプライバシーも確保することができる。さらに30ユニット程の水上コテージも設けている。リゾートとしてのテイストを損ねずプロジェクト全体で180室、シティーホテル並みに客室数を確保できることをこのデザインは可能にする。

また、このプロジェクトでもブライダルなどのコンヴェンション・ファシリティーにはその特色づけに配慮している。水上チャペルを北東の岬に設け、潮の満ち引きで現れるコ―ズウェイーによってアプローチできるというドラマ性を持たせることで、神聖な魅力を図っている。 これは日本の天橋立にそのヒントを戴きながら、用途と機能と言うつながりを両者に求めたものである。